
2024年度の報告
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「子どもしゃべり場」は、コロナ禍の2020年4月に始まった、子どもの気持ちを聴くためのチャットです。2024年度は、セーブ・ザ・チルドレン子ども・地域おうえんファンド「養護施設および障がいのある子どもへの権利保障プロジェクト」の事業の1つとして継続して開設しました。近況報告から学校や家庭で話しにくいことも安心して話せる場として、2024度も多くの子どもたちとつながることができました。
中には、自分の障がいや心の病気、施設での暮らしのことを打ち明ける子もいます。どんな状況にあっても、チャットというツールを通じて気持ちを話す機会は誰にとっても平等です。子どもたちに寄り添い、つながりから見えてきたことを報告します。
相談件数
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2024年度のしゃべり場に来た子どもは1563人で、2023年度より約40%増となりました。総相談件数の82%がリピーターで、新規の相談は約2割に留まりました。
小学生からの相談増加
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2024年度は中高生が最も多く、全体の40%を占めました(n=1563)。加えて、小学生の相談が昨年度の3倍に増加しており、低年齢層への広がりが確認できます。
一方で「不明」が22%を占め、年齢情報の取得精度が今後の課題といえます。
何らかの困難を抱える子は98%継続
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今回の相談データでは、特別支援学校に通学・卒業した人が79件(5.3%)、発達障がいがある人が56件(3.8%)、精神疾患がある人が88件(5.9%) でした。これらを合わせると 223件となり、全相談の15.0% を占めています。全体から見れば6〜7人に1人ということになります。さらに、223人の98%が継続して相談にきていることもわかりました。
相談内容
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子どもたちはどんなことを話しに来ているのか、ということを集計するために、主訴として「いじめ」「虐待」「デートDV」「LGBT」「身体の不調」「心の不調 」「性暴力」「自傷」「進路・将来」「恋愛」「挨拶」「近況報告」「その他」についてカテゴリー分けをしました。
子どもたちからの相談の中で一番多かったのは、「心の不調」で、「心が満たされない」「周りの人から抱え込み過ぎと言われてしんどい」「イライラして落ち着かない」など、精神の不調を話す子も増えています。次いで「いじめ」「虐待」に関する相談もあり、学校での人間関係、親との関係に苦しんでいる子どもたちの姿が見えてきます。一方で、しゃべり場の開始時間にお知らせのメッセージが配信されると「こんばんは」などの挨拶だけが返って来ることが頻繁にあります。また、「これから塾に行く」「行事が終わった」など、近況を含めたやり取りを気軽に話すことも。こうした結果から、子どもたちは日常の中でさまざまな不安や孤独を感じていながらも、しゃべり場とつながり、安心して子どもが気持ちを話せる場としての存在がとても大切になっているといえます
今、どんな気持ち?
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子どもしゃべり場は、子どもの話を聴くことに徹し、「どんな話も否定せずに受け止めて気持ちを聴く」「アドバイスはしない」そして「エンパワメント(その人が元々持っている力を引き出すような肯定的な関わりをすること)」を大切にしています。
子どもたちとのやり取りの中で出てきた気持ちの言葉について事前にカテゴリー分けをして集計しました。 -
1.マイナスの気持ち
「つらい」「死にたい」「嫌」「しんどい」「怖い」「不安」「苦しい」「悲しい」「消えたい」「寂しい」「めんどくさい」「ごめんなさい」「心配」「なし」について毎回チェック集計(複数回答)
相談の中では「つらい:20%」「嫌:17%」「不安:12%」「しんどい:11%」といった言葉が多く使われていました。中には「死にたい:10%」「消えたい」といった気持ちの言葉も出てきており、日常的なストレスだけでなく、切迫した不安や危機感を抱えている子どもも少なくありません。また、カテゴリー分けできない言葉として「疲れた」「学校に行きたくない」など、生活や学校と直結した気持ちも見られました。
マイナスの気持ちの言葉「なし」については22%でした。
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2.プラスの気持ち
一方で、プラスの気持ちについては、件数は少ないものの、「うれしい」(23件)、「楽しい」(19件)、「ありがとう」(13件)、「よかった」(10件)など、相談を通して安心感や信頼感を得られたことを示す言葉もありました。「気持ちが楽になった」「軽くなった」(8件)といった変化を表現する言葉も。また、プラスの言葉を全く出さない人も多くいました。特に、発達障がいや精神的な困難を抱える子どもでは、安心や信頼を感じていても、それを言葉にして伝えることが難しい様子がうかがえました。
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3.気持ちの言葉「なし」と答える人の傾向
マイナスの言葉を「なし」と答える人は、特別支援学校に通った経験がある割合が高く、自分のしんどさを言葉で表しにくいことが分かりました。一方で、プラスの言葉を「なし」と答える人は、精神疾患や発達障がいを持つ割合がやや高く、前向きな気持ちを言葉で伝えることが難しい傾向が見られました。
エンパワメントの言葉との関わり
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相談員は、しゃべり場に来た子どもたちの「気持ち」を聴き、子どもたちを「エンパワメント(その人が元々持っている力を引き出すような肯定的な関わりをすること)」するための言葉を大切にしながら子どもたちに関わっています。子どもたちとのやり取りの中で出てきたエンパワメントの言葉について集計しました。
さらに、2024年度、相談員が対応した「エンパワメントの言葉」の数をテキストマイニングというツールを使って表示してみました。
「話してくれてありがとう」が突出して多いことがわかりました。毎回どんな子どもにも伝えている言葉です。「話していい場所」であることを伝え、安心感を持ってもらうためにも必ず伝えている言葉といえます。
「死にたい」など自分を否定する気持ち言葉が出たときには、相談員から「話してくれてありがとう」「あなたは大切な人」といったエンパワメントの言葉が特によく使われていました。
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その他のエンパワメントの言葉
「来てくれてありがとう」「無理しないで」「ゆっくり休んでね」「大丈夫」「あなたには権利があるよ」「自分を大切にしてね」など、カテゴリー分けできなかったエンパワメントの言葉が全体のうち1割弱ありました。その子に合わせた言葉を投げかけて、子どもたちに寄り添いエンパワメントする様子が伺えました。