こどもしゃべり場

助成:セーブザチルドレンのロゴ

子どもしゃべり場~LINE で話そうよ。今の気持ち~

「こんばんは! 話してもいいですか?」…
毎週月曜日、金曜日の 19 時から 21 時、子どもしゃべり場の開設時間に、子どもたちからのLINEが入ります。「辛いよ」「死にたい」「もう限界」…
私たちは子どもたちの“今の気持ち”に寄り添います。
「話してくれてありがとう」「あなたは悪くないよ」「あなたは大切な人です」…
子どもが自分の気持ちを出せる大切な、そして必要なバーチャルな居場所、それが「子どもの気持ちを聴くチャット・子どもしゃべり場」です。

「子どもしゃべり場」に参加するには

  • 開設している曜日

    毎週月・金曜日

  • 時間

    19時から21時 *変更になることもあります

  • 参加できる人

    18歳までの子ども。
    1対1のトーク・秘密は守られます

  • 運営

    認定NPO法人エンパワメントかながわ

子どもしゃべり場のLINE公式アカウントと友だちになることが必要です。
追加方法はID検索やQRコードを読み込む等で簡単にできます。
ID:187kimochi

データからみる 子どもしゃべり場

2024年度の報告

  • 「子どもしゃべり場」は、コロナ禍の2020年4月に始まった、子どもの気持ちを聴くためのチャットです。2024年度は、セーブ・ザ・チルドレン子ども・地域おうえんファンド「養護施設および障がいのある子どもへの権利保障プロジェクト」の事業の1つとして継続して開設しました。近況報告から学校や家庭で話しにくいことも安心して話せる場として、2024度も多くの子どもたちとつながることができました。

    中には、自分の障がいや心の病気、施設での暮らしのことを打ち明ける子もいます。どんな状況にあっても、チャットというツールを通じて気持ちを話す機会は誰にとっても平等です。子どもたちに寄り添い、つながりから見えてきたことを報告します。

相談件数

  • 実施期間:2024年4月1日~ 2025年3月31日(毎週月曜日・金曜日の19時~21時に開設)
    相談件数:1563件(リピーター率82%)

    2024年度のしゃべり場に来た子どもは1563人で、2023年度より約40%増となりました。総相談件数の82%がリピーターで、新規の相談は約2割に留まりました。

小学生からの相談増加

  • 2024年度は中高生が最も多く、全体の40%を占めました(n=1563)。加えて、小学生の相談が昨年度の3倍に増加しており、低年齢層への広がりが確認できます。
    一方で「不明」が22%を占め、年齢情報の取得精度が今後の課題といえます。
    2024年度の利用状況 2024年度の相談に来る子どもたちの年齢

何らかの困難を抱える子は98%継続

  • 今回の相談データでは、特別支援学校に通学・卒業した人が79件(5.3%)、発達障がいがある人が56件(3.8%)、精神疾患がある人が88件(5.9%) でした。これらを合わせると 223件となり、全相談の15.0% を占めています。全体から見れば6〜7人に1人ということになります。さらに、223人の98%が継続して相談にきていることもわかりました。

相談内容

  • 子どもたちはどんなことを話しに来ているのか、ということを集計するために、主訴として「いじめ」「虐待」「デートDV」「LGBT」「身体の不調」「心の不調 」「性暴力」「自傷」「進路・将来」「恋愛」「挨拶」「近況報告」「その他」についてカテゴリー分けをしました。

    子どもたちからの相談の中で一番多かったのは、「心の不調」で、「心が満たされない」「周りの人から抱え込み過ぎと言われてしんどい」「イライラして落ち着かない」など、精神の不調を話す子も増えています。次いで「いじめ」「虐待」に関する相談もあり、学校での人間関係、親との関係に苦しんでいる子どもたちの姿が見えてきます。一方で、しゃべり場の開始時間にお知らせのメッセージが配信されると「こんばんは」などの挨拶だけが返って来ることが頻繁にあります。また、「これから塾に行く」「行事が終わった」など、近況を含めたやり取りを気軽に話すことも。こうした結果から、子どもたちは日常の中でさまざまな不安や孤独を感じていながらも、しゃべり場とつながり、安心して子どもが気持ちを話せる場としての存在がとても大切になっているといえます

    2024年度の相談内容

今、どんな気持ち?

  • 子どもしゃべり場は、子どもの話を聴くことに徹し、「どんな話も否定せずに受け止めて気持ちを聴く」「アドバイスはしない」そして「エンパワメント(その人が元々持っている力を引き出すような肯定的な関わりをすること)」を大切にしています。
    子どもたちとのやり取りの中で出てきた気持ちの言葉について事前にカテゴリー分けをして集計しました。

  • 1.マイナスの気持ち

    「つらい」「死にたい」「嫌」「しんどい」「怖い」「不安」「苦しい」「悲しい」「消えたい」「寂しい」「めんどくさい」「ごめんなさい」「心配」「なし」について毎回チェック集計(複数回答)

    マイナスの気持ち

    相談の中では「つらい:20%」「嫌:17%」「不安:12%」「しんどい:11%」といった言葉が多く使われていました。中には「死にたい:10%」「消えたい」といった気持ちの言葉も出てきており、日常的なストレスだけでなく、切迫した不安や危機感を抱えている子どもも少なくありません。また、カテゴリー分けできない言葉として「疲れた」「学校に行きたくない」など、生活や学校と直結した気持ちも見られました。

    マイナスの気持ちの言葉「なし」については22%でした。

  • 2.プラスの気持ち

    プラスの気持ち

    一方で、プラスの気持ちについては、件数は少ないものの、「うれしい」(23件)、「楽しい」(19件)、「ありがとう」(13件)、「よかった」(10件)など、相談を通して安心感や信頼感を得られたことを示す言葉もありました。「気持ちが楽になった」「軽くなった」(8件)といった変化を表現する言葉も。また、プラスの言葉を全く出さない人も多くいました。特に、発達障がいや精神的な困難を抱える子どもでは、安心や信頼を感じていても、それを言葉にして伝えることが難しい様子がうかがえました。

  • 3.気持ちの言葉「なし」と答える人の傾向

    マイナスの言葉を「なし」と答える人は、特別支援学校に通った経験がある割合が高く、自分のしんどさを言葉で表しにくいことが分かりました。一方で、プラスの言葉を「なし」と答える人は、精神疾患や発達障がいを持つ割合がやや高く、前向きな気持ちを言葉で伝えることが難しい傾向が見られました。

エンパワメントの言葉との関わり

  • 相談員は、しゃべり場に来た子どもたちの「気持ち」を聴き、子どもたちを「エンパワメント(その人が元々持っている力を引き出すような肯定的な関わりをすること)」するための言葉を大切にしながら子どもたちに関わっています。子どもたちとのやり取りの中で出てきたエンパワメントの言葉について集計しました。

    さらに、2024年度、相談員が対応した「エンパワメントの言葉」の数をテキストマイニングというツールを使って表示してみました。

    テキストマイニング

    「話してくれてありがとう」が突出して多いことがわかりました。毎回どんな子どもにも伝えている言葉です。「話していい場所」であることを伝え、安心感を持ってもらうためにも必ず伝えている言葉といえます。

    「死にたい」など自分を否定する気持ち言葉が出たときには、相談員から「話してくれてありがとう」「あなたは大切な人」といったエンパワメントの言葉が特によく使われていました。

  • その他のエンパワメントの言葉

    「来てくれてありがとう」「無理しないで」「ゆっくり休んでね」「大丈夫」「あなたには権利があるよ」「自分を大切にしてね」など、カテゴリー分けできなかったエンパワメントの言葉が全体のうち1割弱ありました。その子に合わせた言葉を投げかけて、子どもたちに寄り添いエンパワメントする様子が伺えました。

これまでのしゃべり場

しゃべり場に来る子どもたち

「友だち、家族、恋人、心配なこと、悩んでいることなんでも聴くよ」と呼びかけています。

もう疲れた…死にたい…

疲れました

「死にたい」「疲れた」…しゃべり場には誰にもいえない気持ちを話す子どもがとても多い。
私たちは「死にたいくらい」の気持ちを何回も何回もそのまま受け止める。
私たちは、何カ月もそのままを受け入れ話を聴き続ける。
ガンバってガンバってガンバり続けている子どもたち。

自分の気持ちや考えを整理したら親に話し、高校を辞め自分で選んだ別の高校に編入することができた。
友だちのこと、学校のこと、親のこと、直接言えなかった自分の思いを言葉にしたとき本当に自分がどうしたいかが見えてきた。
自分の選択肢は自分で決めていい。間違ったらまた考えて選びなおしてもいい。

いじめ…ひとりぼっちは嫌だ…LINEだから話せる

しう

友だちとの関係、自分の家族、自分自身のことは、会うことも声を聴くこともない、LINEだから話せる。
「話してくれてありがとう」「あなたは一人じゃない」と繰り返す。

「あなたはひとりじゃない」「あなたは悪くない」と伝えると自分の生い立ち、親のDV離婚、同居家族の問題、経済的な困窮…誰にも話せなかった自分の困っていることを話しはじめた。
まわりには信用できるおとながいない。
でも、LINEだから話せる。
どんなに小さなことでもできていることを認め自分の中に力があることに気づいてもらう。
それがエンパワメントだ。
LINEは一方通行でもなく、即答しなくても返事が返ってくる。だから子どもたちにはちょうどいいツール。
「ひとりじゃないよ」「あなたは大切な人」…文字が残ることもちょっといい。
これからも、「一緒に考えよう」

子どもしゃべり場が大切にしていること

子どもしゃべり場は、子どもの話を聴くことに徹し、「どんな話も否定せずに受け止めて気持ちを聴く」「アドバイスはしない」そして「エンパワメント(その人が元々持っている力を引き出すような肯定的な関わりをすること)」を大切にしています。

大切にしていること

子どもたちが発信する気持ちの言葉を抽出し分析

この対応方法により子どもたちには少しずつ変化が現れました。
自己肯定感を失いかけている子どもが自信を取り戻す力に繋がり成果は出ていると実感していましたがエビデンスがありません。
そこで2021年度は群馬大学の協力をいただき子どもしゃべり場の成果を「見える化」するための手法(コンテクスト解析)を行いました。(報告はこちら⇒https://npo-ek.org/news/24586/
子どもしゃべり場は子どもが自分の気持ちを出せる大切な、そして必要な場だと改めて確信しました。

子どもが安心して話せるバーチャルな居場所

コロナ禍で始めた「子どもしゃべり場」でしたが、コロナの影響だけではなく、今までの日常生活の中で、家庭(虐待・DV・ネグレクト)や学校(いじめ・体罰・ピアプレッシャー)で起きていた暴力、また貧困やジェンダーなど、さまざまな問題や悩みを抱える多くの子どもたちが繋がるきっかけの場になったと実感しています。

毎日ニュースで伝えられるのは、ほんの氷山の一角です。確かに貧困で今日の食事に困っている人に食料を届けることは最優先かもしません。

でも、心の渇きに苦しんでいる人に安心な場所を届けることも同じように大切なこと。心に蓋をしてしまうと、すべての感情に鈍感になります。
「誰かに助けてもらっていいよ」
「誰かに話してもいいよ」
…知らず知らずにたまった気持ちを吐き出していい。

子どもたちが何より安心して話せる居場所がこれからも必要だということがわかりました。
子どもしゃべり場は問題を見つめる場所ではなく、(問題になる前の)ガス抜きの場として、私たちは今後も子どもの話を聴いていきます。

運営:認定NPO法人 エンパワメントかながわ